平成27年から運行を開始した、東北初の海を巡る屋形船・潮騒。残念ながら現在休業中ですが、再開を期して潮騒の情報をおさらいします。
遊覧船でも納涼船でもない「屋形船」
海のまちである大船渡を海から楽しむ新たな試み、それが屋形船と言えます。
船の種類・用途は数あれど、屋形船とは「和船の一種で、主に船上で宴会や食事をして楽しむ、屋根と座敷が備えられた船のこと」だそうで、古く平安時代には貴族に、江戸時代には大名や豪商の遊びに用いられ、江戸・隅田川の屋形船が有名です。遊覧船とは趣が違い、リッチなセレブが大人の楽しみで乗る船というところでしょうか。
ちなみに納涼船なる船もありますが、こちらは名前からして夏場に用途が限られるもので、暑い時季に水上で涼をとる目的の船ということのようです。
さらに脱線しますが、震災前には大船渡にも大型の観光遊覧船「かえで」がありました。津波で細浦漁港から蛸ノ浦漁港まで流され、船は一見無事なようにも見えましたが、再び観光客を乗せることはないまま、30年近く続いた歴史に幕を下ろし、ひっそりと姿を消しました。
基本情報
・乗船場所 赤崎町跡浜岸壁(太平洋セメント付近の県道に案内看板)
・乗合は昼と夜の2回運航
昼の部:12時出航、所要時間1時間30分、料金4,860円(弁当・ドリンク付)
夜の部:18時出航、所要時間2時間30分、料金8,640円(料理・飲み放題付)
・乗合の申込人数2~20名
・貸切船は20名以上(乗船定員60名)
・冷暖房設備、男女トイレ、カラオケ、喫煙コーナーあり
・3日前までに要予約
いざ乗船!
潮騒の周遊コースは、大船渡湾内を巡り、湾口防波堤で引き返す航路です。大船渡湾は、湾の形状が奥に深ことから天然の良港として知られ、波が非常に穏やかなのですが、その特長を利して船遊びに生かそうというわけです。
やはり乗るなら涼を求めて夏の時期ということになりそうですが、暖房設備もあるため、寒さを気にせず快適に楽しめます。また、椅子席を用意しているので、年配の方でも安心して利用できます。
昼の部の運航では、海に出た途端ウミネコが群がってきます。タイミングを見計らって船長が船を停め、展望デッキに出ると餌付けタイムが始まります。群れに向かってエサを放り投げると、ウミネコが上手にキャッチしますが、慣れてくれば素手でじかに餌付けすることもできます。
また、屋形船とくれば、海上からの大船渡の景色はもちろんのこと、一番のお楽しみはやはり料理。昼なら特製弁当が、夜ならお酒とともに楽しめる料理がつきますが、いずれも海鮮がメインで、蒸しがきやあわびを始め、旬の魚を使うだけでなく、一品一品趣向をこらしており、三陸大船渡の味覚を存分に味わえます。
おわりに
穏やかな大船渡湾上でリアス式海岸の景観と海の幸を楽しむ、魅力たっぷりの屋形船「潮騒」ですが、気がかりはやはり休業中ということです。他地域に類のない取り組みなので、再開の情報を待ちたいところです。