三陸大船渡と言えば、一年を通じて美味しい魚介類が手に入る水産のまちとして知られていますが、ここでは大船渡の魚にまつわる話をご紹介します。
大船渡の海の幸がおいしい理由
三陸沖は、世界に数多く存在する漁場の中でも特に漁獲量の多い地域、いわゆる世界三大漁場の一つに数えられる「北西太平洋海域」に属します。寒流である親潮と暖流である黒潮がぶつかる潮目でプランクトンが爆発的に繁殖し、プランクトンを餌とする小魚、さらには小魚を餌とする魚が多く集まるというわけです。
そして、岩手県でも宮古から南の地域はリアス式海岸となっており、山地が沈降したことによって、湾や入り江がノコギリの歯のようにギザギザに入り組んだ地形をしています。このため、荒天時でも外洋の影響を受けにくく、波の穏やかな湾内ではカキやホタテ、ホヤなどの養殖が盛んに行われているのです。
さらに、岩礁域ではあわびやうにといった磯資源に恵まれ、外洋ではわかめなどが養殖されています。
こうした好条件が重なって、大船渡ではいつでも旬の海の幸を味わうことができるのです。
大船渡を代表する魚・さんま
さて、様々な魚介が採れる当地ですが、大船渡を代表する魚といえばやはり!さんまでしょう。平成25年から連続して水揚数量・水揚金額ともに本州1位を続けています。
さんまを食べられるイベントとしては、東京都目黒区目黒の田道広場公園で開催される「目黒のさんま祭」が元祖で、宮城県気仙沼市が昭和52年から実施しています。
また、目黒駅駅前商店街で開催される「目黒のさんままつり」は宮古市が平成11年からさんまを提供しています。
そして、遅ればせながら2匹目のどじょうならぬ3匹目のさんまというわけで、わが大船渡も平成21年から「三陸・大船渡東京タワーさんままつり」を開催しています。
ただ、他のさんまイベントと決定的に違うのは、学科と実技試験をパスして認定を受けた「さんま焼き師」が炭火焼を提供してくれること。筆者ももちろん有資格者です。
水揚げデータ
大船渡では魚種別の水揚げがどうなっているか、データで見てみましょう。
水揚げ数量(トン)
平成20年 | 平成23年 | 平成26年 | 平成29年 | 令和2年 | |
1位 | さんま (30,435) | さんま (18,438) | さんま (27,133) | さんま (11,102) | いわし (14,969) |
2位 | さば (10,819) | いさだ (3,621) | いさだ (5,921) | いわし (6,146) | さんま (6,237) |
3位 | いさだ (8,545) | さけ・ます (1,473) | さば (3,374) | さば (5,261) | さば (5,600) |
4位 | さけ・ます (5,568) | さば (1,399) | いわし (1,860) | いさだ (4,953) | いさだ (1,561) |
5位 | かつお (3,692) | するめ (1,217) | するめ (910) | かつお (824) | かつお (758) |
水揚げ金額(千円)
平成20年 | 平成23年 | 平成26年 | 平成29年 | 令和2年 | |
1位 | さけ・ます (2,270,322) | さんま (1,873,617) | さんま (2,973,611) | さんま (2,918,957) | さんま (2,819,334) |
2位 | さんま (1,728,893) | さけ・ます (660,652) | さけ・ます (1,404,030) | さけ・ます (666,055) | いわし (677,933) |
3位 | かつお (1,129,496) | するめ (299,537) | かつお (259,200) | いさだ (510,795) | さば (599,881) |
4位 | さば (924,565) | かつお (157,210) | いさだ (258,066) | さば (486,639) | いさだ (353,465) |
5位 | するめ (454,450) | いさだ (149,092) | さば (246,803) | いわし (363,547) | かつお (201,183) |
かつてはスーバーで生さんまが1尾50円なんてこともザラだったものでしたが、このところの不漁で高級魚と化したのに続き、いかやさけ類も振るわなくなってきています。一体海で何が起きているのだろうかと心配になってしまいます。
ちなみに、いさだというのはツノナシオキアミのことで、小さなエビのような形をしていて、よく海釣りの撒き餌に使われるヤツです。
大船渡では春の風物詩とも呼ばれ、解禁を迎える2月下旬から4月末ごろまで水揚げがあります。とれたてのいさだは桜色をしていて大変おいしそうなのですが、鮮度が落ちるとすぐ色が悪くなるため、食品加工には向いていませんでした。
それが昨今の研究により、桜色を保ったまま食品として使えるようになり、DHAや肥満抑制成分を豊富に含むなど健康機能性にも注目が集まっています。
大船渡市魚市場
さて、上記の魚種をはじめ、さまざまな魚が一年を通して水揚げされるのが大船渡市魚市場ですが、建設中に津波で被災した新しい魚市場は平成26年3月に竣工しました。
昔の魚市場は一般人が紛れ込んで見学できたりしたものでしたが、今は衛生管理が確立されて、間近で見ることはできなくなりました。
新鮮な海鮮料理がボリュームたっぷりと評判の「レストラン海」は人気があるものの、宮古の魚菜市場や釜石の橋上市場のような、鮮魚の買える場所が施設内にないのは、個人的に残念でなりません。鮮魚のお買い求めは、魚市場近くに点在する小売り・卸売り店をご利用ください。
おわりに
大船渡の基幹産業ともいえる漁業の一端をお伝えしました。新鮮なおさかなは、とれたてを現地で食すのが一番!大船渡のおいしい魚を扱っている飲食店は豊富にありますので、是非お越しを!