一般に「なべやき」といえば、誰に聞いても大抵「うどん」としか答えないでしょう。まれにラーメンもあったりしますが、いずれ鍋ものに麺が入った食事のイメージかと思います。
しかし!ここ大船渡ではちょっと違い、なべやきとは郷土菓子を指すのです。
なべやきとは
なべやきとは一体どんなものかと言いますと、小麦粉生地に黒砂糖を入れて焼いた、膨らんでないホットケーキのようなイメージです。ふっくらしておらず、モチモチした食感があります。フライパンがない時代、縁の浅い鉄鍋や土鍋で焼いていたことから「なべやき」の名がついたと推察されます。
なべやきは、子供のおやつや仕事の合間の一服に出てくることが多く、定番は黒糖入りで見た目は黒っぽいのですが、玉砂糖を入れる白っぽいタイプもあります。ちなみにこの辺では一服のことを、「たばこ」とか「たばこどき」なんて言います。「そろそろたばごにすっぺ」といった用法です。
なべやきの作り方
材料
・小麦粉 250g
・黒砂糖 150g(好みにより加減)
・塩 好みで
・水 適量
・サラダ油 適量
作り方
1 容器に小麦粉、黒砂糖、塩を入れたものに水を加え、トロっとする程度にかきまぜます。生地のかたさは好みですが、ゆるくして出来上がりを薄くするのが一般的です。
(生地を作るときのコツ)黒砂糖の塊は大きければつぶして小さくしますが、小さいものはそのまま使います。すると、口に入った時の幸福感が違います(笑)。
2 熱したフライパンにサラダ油をひきます。焦げ付きやすいので油は多めにしましょう。
3 フライパンに生地を入れ、蓋をして弱火で両面焼きます。黒糖の塊は焦げやすいので注意してください。
なべやきの独創性
2014年には「秘密のケンミンSHOW」で、岩手県民のヒミツのおやつとして紹介されたこともあるなべやきなのですが、大船渡・気仙地域以外でも作られているのでしょうか。
練った小麦粉で黒砂糖入りの餡を包んで茹でる郷土菓子「かまもち」は、名前こそ違えども県内のあちこちで作られていました。ところがこのなべやき、あちこち調べてみましたが、どうも気仙地域以外の県内に類似のお菓子が見当たりません。
小麦粉と黒砂糖を使って焼いたおやつは日本広しといえど、大船渡だけ!?とも思いましたが、さすが日本は広いです。同じ材料で同じような名前のものがちらほら。
・神奈川県小田原市「鍋焼き」
材料は一緒ですが、重曹を入れる分、ふっくらした仕上がりになるようです。
・岐阜県可児郡御嵩町「鍋焼き」
同じ材料で同じ名前ですが、こちらでは小麦粉よりうどん粉の方がポピュラーなのかもしれません。ちなみに一服のことは「茶づけ」と呼ぶのだそうで。
・和歌山県和歌山市「いりぼら焼き」
「いりぼら」とは鉄製のほうろく鍋のことだそうで、結局同じ名前!?材料は一緒ですが、小麦粉より米粉の方が主流のようです。
・愛媛県大洲市「ほうろく焼き」
材料は同じ。「ほうろく」とは素焼きの平たい土鍋のことなので、これも同じ名前と言えます。
広く見渡せば仲間がいたじゃないかって話ですが、写真で見たところ、いずれも当地のなべやきほど黒糖まみれじゃないように見受けられます。それにしても岩手県内で探し出せなかったのが気がかりです。今後要リサーチです。
ところでこのなべやき、大船渡では誰でも食べたことがあるはずですが、店で売っているのをまず見かけません。シンプルすぎる家庭料理ということで、売るほどのものじゃないから!?食堂のメニューでそうめんを見かけないのに似ていますね(似てないか)。