春のセンバツベスト4!大船渡高校野球部の快進撃

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春のセンバツベスト4!大船渡高校野球部の快進撃

大船渡で高校野球と言えば、今やプロ野球選手となった佐々木朗希投手を擁する令和元年、35年ぶりの甲子園出場をかけた大船渡高校の県大会での活躍で大いに盛り上がったのが記憶に新しいところです。

しかし!市民を野球で最も熱くさせたのは、遡ること35年前に選抜高校野球大会出場を果たし、県勢初のベスト4を成し遂げた、昭和59年春の「火の玉野球」大船渡高校の快進撃ではないでしょうか。ここでは当時の熱戦を振り返ります。

甲子園出場まで

昭和59年春の第56回選抜高校野球大会に、東北代表として大船渡高校が出場し、準決勝へ進出しました。公立高校ながら、並いる強豪を倒した戦いぶりは、甲子園に大船渡旋風を巻き起こしました。好投手左腕・金野正志選手や主砲・鈴木嘉正選手を中心に投打守のバランスのとれたチームでした。

県中学校野球、東北中学校野球の両大会を制覇した大船渡一中ナインのうち7人が大船渡高校に進学し、入学時から期待されていました。

その世代が1年の夏に県大会ベスト16、2年夏にはベスト8、その秋の県大会で初優勝。東北大会でも、山形南を14-1の7回コールド、東北高を7-1、五所川原高を8-2で下し、決勝は延長16回の末、金足農業に4-3で競り勝ち、センバツを当確にしました。

1回戦 多々良学園(山口)4-0

初出場である大船渡高校の初戦の相手は、中国大会の覇者・山口の多々良学園でした。1回裏、4番鈴木のライトスタンドへライナーで飛び込むツーランホームランで先制すると、8回にもツーアウトから5番今野が左中間を深々と破る3塁打で2点追加。

守ってはエース金野がコーナーを丹念につくピッチングで多々良学園打線を寄せ付けません。結果、新チーム結成以来、練習試合を含め無傷の26連勝を誇った多々良学園を散発5安打の完封で難なく撃破したのでした。

2回戦 日大三島(静岡)8-1

2回戦の相手は、静岡の日大三島高校。前年秋の東海大会では、優勝校の愛工大名電高に準決勝で敗れたものの、粘り強い野球を認められ、地区の3枠目として選ばれたチームでした。

試合は3回裏、3番清水の犠牲フライでの先制点を皮切りに、4番鈴木が2試合連続となるレフトスタンドへのホームランを放ち、打力で圧倒。守っては粘りの日大三島打線を6安打に抑え、8-1と快勝しベスト8進出を決めました。

準々決勝 明徳義塾(高知)1-0

準々決勝は高知の強豪校として名高い明徳義塾高校。当時桑田・清原のKKコンビで全盛を誇ったPL学園の対抗馬と目され、明徳が勝つとの下馬評が大勢を占めました。

試合は4回裏、5番今野が明徳の主戦・山本が投じたカーブを思い切りよく引っ張り、3塁打で1点を先制します。

試合はその後膠着状態が続きますが、8回表にピンチを迎えます。ノーアウトから、相手が打った右中間へのフライを野手が接触して落球、2塁に進塁されます。しかしその後、キャッチャー吉田のサインプレーで金野投手が絶妙な2塁へのけん制、見事アウトを取ります。初出場チームが強豪校相手に、緊迫の場面で実に落ち着いたプレーを見せてくれました。焦る明徳打線は金野投手を捉えきれず3安打にとどまり、大船渡高校は虎の子の1点で明徳義塾高を振り切ったのです。

準決勝 岩倉(東京)1-2x

岩手県勢初のベスト4の相手は、初出場ながら前年秋の神宮大会を制した東京の岩倉高校。初出場同士で決勝行きの切符をかけた戦いとなりました。

両チームともにノーヒットで迎えた3回表、先頭の7番平山が初ヒットを放ち、すかさず8番吉田が送りバント。そして1番木下がセンター前にタイムリーヒットを放ち、待望の1点を先制しました。

金野投手は安定感抜群で、5回を終わって岩倉打線を1安打に抑えていました。しかし6回裏、フォアボールで出たランナーを、この日の主役となる岩倉の2番菅沢が2塁打で返し同点とします。

そして迎えた9回裏。先頭打者は6回に2塁打を打っている菅沢でした。2ストライク2ボールから金野投手が投じた5球目、内角のストレートを捉えられ、打った打球は無情にもレフトポールを巻いてスタンドに入り、サヨナラホームランとなりました。

岩倉高校は準決勝で勝利した勢いそのままにPL学園を下し、初出場・初優勝という快挙を成し遂げます。

大船渡高校の強さ

岩手県勢として初のセンバツベスト4に進出した大船渡高校ですが、県勢ではその後菊池雄星投手を擁する花巻東高校が準優勝するまで、実に25年もの間到達できなかったほどの快挙でした。

大船渡高校は新チーム結成以来21勝1敗の戦績を掲げて甲子園へ乗り込みました。金野投手は左の技巧派で、171cm、65kgとやや小柄ながら、柔軟な体から繰り出す速球、カーブはキレが良く制球力は抜群でした。

加えて、センバツでは木下清吾選手、新沼剛選手、清水丈二選手、鈴木嘉正選手、今野一夫選手と続く上位打線は強力で、捕手の吉田亨主将のリードは高く評価されました。

チーム打率3割1分9厘、平均得点7.3点、平均失点1.6点、盗塁59個、金野投手の防御率0.68。

甲子園でもその力をいかんなく発揮し、高い守備力を示しました。また、盗塁12個は参加32チーム中最多で、得た四死球28個は2位と、選球眼の良さも実証しました。 大船渡高校は投手を軸とした堅い守りを土台に、目・足・打撃と三拍子揃った攻撃力があったチームと言えます。またいつか、こんなチームが大船渡を盛り上げてくれはしないかと、素晴らしい夢を見せてくれた大高ナインに心から感謝しながら、淡い期待を寄せています。

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