大船渡・陸前高田・住田からなる気仙地方の婚礼では、他では見られない独特の風習がいくつかあります。ここでは、その一風変わった風習についてご紹介します。
3つの独自風習
他で見聞きすることがありませんが、大船渡の婚礼では当たり前のように行われる風習が「道化」「おちつき」「さくら音頭」の三つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
道化
「道化」は花嫁が花婿の家に行く道中、近隣のおばちゃん方が仮装して出迎えるものです。ひょっとこやおかめの面をつけ、赤ん坊の人形をおんぶしていたり上半身裸に見えるようにしていたりと面白おかしい身振り手振りで、嫁入りの行列の道中を盛り上げます。道化の名の通りピエロのような役回りです。
おちつき
おちつきとは
婚礼の披露宴では目の前にごちそうが並びますが、会食の前には各種セレモニーがあるため、多くの場合料理の上に乾燥防止のため紙製のカバーなどがかけられます。
しかしそれとは別に、決まって二つの椀が出されます。一つには細麺のうどんが、もう一つにはあんこ餅が入っています。そしてあろうことか席に着くやいなや、出席者の誰もが椀の蓋を開けて食べ始めるのです。
この二つの椀料理、そしてそれを食べる風習が「おちつき」と呼ばれるものです。
おちつきの由来
昔であれば嫁入りには、遠方から徒歩あるいは馬ではるばるやって来るわけで、嫁ぎ先に着いたときにはお腹も空いているだろうと、正式なお膳の前にまず出されたもてなしの風習が起源と言われています。
なぜうどんと餅という組み合わせなのかは、うどんはツルツルで鶴、餅はよく噛まないといけないので噛め(亀)から来ているとも言われます。
「落ち着き雑煮」という言葉があり、同じシチュエーションで食べる餅のようですが、大船渡のおちつきに出るうどんの具材は、甘じょっばいニンジンや油揚げにシイタケなどで、雑煮の餅をうどんに変えたような料理です。もしかすると、落ち着き雑煮をさらにめでたい意味合いに深化させたのが大船渡のおちつきなのかもしれません。・・推測ですが。
どんなときに食べる?
披露宴の会食で目にすることが多いですが、人が集まる場であれば冠婚葬祭を問わず振る舞われるのが通例です。
さくら音頭
宴もたけなわ、そろそろお開きかというタイミングで、ある曲が鳴り出します。すると出席者全員で輪になり、桜の枝を手に取って踊り出すのです。この時の曲が、五木ひろしの歌う「ひろしのさくら音頭」なのです。
この歌、昭和50年発売の曲らしいので、定着したのはその後ということになろうかと思いますが、当地は五木ひろしにゆかりがある訳でもなく、一体誰が?何の目的で始めたのか?非常に謎ですが、なぜか高確率でかかり、皆慣れた手つきで、当たり前のように踊ります。初めて見た方は面食らうと思いますが、見よう見まねで踊るうちに覚えてしまいます。
まとめ
・道化の正体は近所のおばちゃん。時に見ている方が恥ずかしいくらい盛り上げてくれます
・おちつきは宴会のお膳とは別出しで、最初に食べられます
・さくら音頭は披露宴の定番曲。五木ひろしが歌っていることもあまり知られてないかも
披露宴自体もコロナ禍で少ないと思いますが、風変りながらも楽しさのあるこれらの風習が今後も続いていくことを期待します。