温泉とは一見縁遠い感のある岩手県沿岸部ですが、平成12年、大船渡市日頃市町に三陸沿岸初の天然アルカリ温泉としてオープンしたのが「しゃくなげの湯っこ 五葉温泉」です。
ここでは、五葉山の麓、県道唐丹日頃市線沿いの山奥に突如現れる鷹生ダムの湖畔に佇む市民憩いのスペース・五葉温泉についてご紹介します。
温泉はどうやってできたのか
岩手県の温泉は、火山帯である奥羽山脈周辺に多く存在しており、北上山地周辺や、ましてやさらに東側である沿岸部には温泉がないといってよい状況でした。こうした状況を打ち砕いたのは、近代の探査技術と掘削技術の進展でした。
大船渡市農協設立30周年の節目となった平成8年、当時の村上元樹組合長が記念事業として地域への恩返しのため、地元企業で法人を組織し、温泉の掘削を計画したのでした。
掘削予定地は市農協が所有する五葉牧野で、現地踏査の結果、温泉が湧き出る見込みであることが判明。深さ2,000mで推定温度は41~46℃、湧出量は50~150立方m、泉質は重曹泉または単純泉とのことでした。
同年12月に掘削を開始し、冬期を挟んだことで苦労をしたものの、翌年2月に完工することができました。掘削結果は、深さ2,000mで39.5℃、地上で36.1℃、湧出量は想定を上回る222立方mで、アルカリ性単純泉でした。また、湯温が幾分低かったことから、温泉施設に加温機を設置することとしました。
温泉施設予定地が農業振興地域だったことや、温泉水が盛川を経由して大船渡湾に注ぐことによる漁業補償など、課題は多かったものの、一つずつ乗り越えていきました。
そしてついに平成12年、悲願であった温泉施設の開業にこぎつけたのです。温泉から望む五葉山の夏を彩る花・しゃくなげの名を冠し、「しゃくなげの湯っこ 五葉温泉」と命名されました。
平成29年には、待望の露天風呂も完成。石造りの浴槽で、日本庭園風の雰囲気を醸し出しています。正面には鷹生ダムの多目的広場があり、広々した景色が楽しめます。
温泉にはどんな施設があるのか
五葉温泉は露天風呂1、ジャグジー付きの内風呂1のほか、サウナと水風呂が設置されています。泉質はアルカリ性の単純泉でph10.3、肌がツルツルになる「美肌の湯」なのです。
日帰り温泉のため、残念ながら宿泊設備はありません。泊まるためには市街地まで降りてホテル等を探すしかありません。
施設内には産直施設が併設されており、地元で採れたばかりの野菜や漬物などの加工品、がんづきや大福などの郷土菓子を売っています。
マッサージ施設のほか、コイン式のマッサージ器も用意されており、温泉でほぐれた体をさらにリラクスさせることができます。
食事処で多彩なメニューを味わうこともできます。時間は11時~17時45分(土日祝18時45分)と、もう少し長くても良いくらいですが、味はなかなかのもの。「風呂よし 味よし 気分よし」を経営信条として謳っているだけのことはあります。他では味わえない、地元産きび粉を練り込んだ「きびソフト」もあります。
食事処に隣接するのが無料の休憩所。72畳もあるので、食事後にごろ寝できます。また、待ち合わせであれば入口付近のホールで休憩でき、こちらには自動販売機やちょっとしたゲーム機も備え付けてあります。
入浴料はいくら?入浴時間は何時まで?
・入浴料
大人700円(JAF会員証提示で100円引き)
小学生350円
幼児無料
・入浴券
1枚700円
12枚綴り6,000円
・入浴時間
午前10時~午後8時
・その他
シャンプー・ボディソープは備え付け
貸タオル100円、販売タオル210円
休館日はいつ?
毎月第2・第4火曜日
その他
毎週水曜日と金曜日には、五葉温泉から盛駅・大船渡駅まで無料シャトルバスを運行しています。
また、無料レンタサイクルも用意しています。温泉の目の前にある鷹生ダムは1周5km弱で、自転車に乗れさえすれば、小学生でも巡れるほど。温泉入浴前に、雄大な五葉山麓の景観を楽しみながら季節を肌で感じ、汗を流すのもよいでしょう。一部急坂がある関係で、温泉を右手に見ながら時計回りのサイクリングをおすすめします。
まとめ
五葉山登山の帰りに、鷹生ダム見学のついでに、あるいはドライブがてら五葉温泉をご利用ください。
人里を少々離れた場所ということもあり、野生のシカには高い頻度で会えるほか、サルやカモシカ、最近ではイノシシも出ます。 車でお越しの際はくれぐれもお気をつけを!