1,351mと三陸沿岸随一の高さを誇る霊峰・五葉山は動植物の宝庫です。ここでは、五葉山麓に出没する動物たちをご紹介します。
目次
シカ 遭遇度★★★
ニホンジカに7つある亜種の内、本州に生息するものがホンシュウジカであり、五葉山周辺で見られるのはこのホンシュウジカです。五葉山麓に最も多く生息する動物の一つです。
明治から昭和の初めにかけて乱獲されたことから、岩手のホンシュウジカは五葉山周辺に残るのみとなってしまい、五葉山はホンシュウジカが生息する最北端と言われていました。このため保護策が取られるようになりましたが、逆に現在では個体数が増えすぎてしまい、農林被害が深刻化しています。
シカに遭遇する確率は四季を通して非常に高く、車通りの少ない朝晩は特に多く見られます。道路を勢いよく横断する事が多いので、車の運転の際は衝突に注意が必要です。群れることが多いため、1頭飛び出してきたら後続が来ると思っていいほどで、知っておけば被害軽減に役立ちます。
サル 遭遇度★★
五葉山は北上山系で唯一のニホンザル生息地となっています。個体数が少ないことから環境省のレッドリストに載っているほか、東北の他の地域のニホンザルは同じ遺伝子タイプにも関わらず、五葉山のサルだけが異なるそうで、研究者でも説明がつかないほど珍しい、大変貴重な存在のようです。
しかし、地元では農業被害が年々深刻化しており、シカと違って電気柵や網もかいくぐる賢さがあるので非常にやっかいです。他の動物は畑などその場で食害しますが、サルがカボチャなんかを小脇に抱えて逃げ去る姿はまるで泥棒のようで、余計腹が立ちます。
そんなわけで、人里まで降りてきていることからサルに出会うのも比較的容易です。山の景色に紛れてしまい、なかなか見つけるのは難しいですが、木の上に見張りがいて人が近づくと鳴き始めるので、声を頼りに探すことができます。群れているので、1頭見つけられれば数十頭の集団がすぐそばにいるはずです。
クマ 遭遇度★
生息しているのはツキノワグマです。車に乗っているときでもなければ会いたくはない存在かと。人里に降りてくることもあり、不意に遭遇して襲われてしまう例もあるのですが、元来クマは臆病なので人の存在に気づけば逃げていきます。山中に分け入れば確率はぐっと上がりますが、おすすめできないので、車中から沿道の法面や樹上に目を凝らすことになります。
イノシシ 遭遇度★
岩手でも生息域が拡大している猪ですが、とうとう五葉山麓にも出てきました。個体数はまだ多くないと推測されますが、足も速く、1m以上ジャンプすることも可能なので、見かけたらゆっくり立ち去ることをおすすめします。私が4・5頭の群れに近づいたときは、一旦逃げかけたものの「ブフー、ブフー」と威嚇されました。
リス 遭遇度★★★
山林よりも道路上をウロウロしているのが見つけやすいです。
ハクビシン 遭遇度★
鼻の白い筋模様が目印のハクビシンですが、夜行性のためそれと気づくのは容易ではないでしょう。
カモシカ 遭遇度★★
ウシの仲間に分類されるカモシカも、シカに比べれば頻度は大分下がりますが生息しています。シカとの見分け方としては、シカの体は茶色っぽい色合いですが、カモシカは灰色をしており、角も短いです。また、走りっぷりでもシカの軽快さがカモシカにはなく、ノソノソと走ります。
シカはすぐ逃げて距離をとりますが、カモシカはウシの仲間だけあって鈍重でなかなか逃げようとしません。さすがに触れはしませんが、かなり近づくことができるはずです。
ヤマドリ 遭遇度★★★
歩いていると、近くから突如「ドドドド」と音が響いてくるのに驚かされます。これはオスの威嚇行為だそうで、こんなときは単独よりもつがいでいることの方が多いように思います。
アナグマ 遭遇度★★
枯れ葉に潜り込みながら、間抜けにも向こうから近づいてくることも多いアナグマ。これも最接近できる動物の一つですが、寄ると意外にも立ち上がって威嚇し、こちらが怯んだすきに逃げ出します。
おわりに
五葉山とその周辺に生息する動物を紹介しました。まるで野生の動物園ですが、豊かな自然の象徴とも言えます。とはいえ、早朝一人きりで山歩きしているときに、クマだのイノシシだのには会いたくないものです。熊よけ鈴の持ち歩きがオススメです。