大船渡では6月に入るあたりに見ごろを迎えるツツジですが、市内では五葉山や夏虫山周辺が鑑賞スポットとして有名です。
しかし、一番見ごたえがあるのは、やはり今出山でしょう。標高756mの今出山は、古くは金山として栄え、江戸時代には仙台藩直轄として金を産出していました。山頂付近から三陸町越喜来の甫嶺(ほれい)地区側には、今も坑道の跡が分布しています。
昭和に入り、金の採掘が再開されましたが、最盛期には社宅等の住居や食堂、クラブが開設され、映画の興行が行われるほどの賑わいを見せる鉱山町でした。その後、産金事業の休止・再開を繰り返しましたが、昭和31年の閉山以降事業が再開されることはありませんでした。
現在は坑道跡のほか、事務所や映画館があった跡を示す標柱が残っています。
そんな産金の歴史も興味をそそる今出山ですが、頂上付近にテレビ局の電波塔やら通信会社の携帯電話基地局やらが林立するだけあって、麓の市街地を広く眺望できます。つまり、ツツジの咲く6月には、山頂に咲き乱れる朱色が市内の広い範囲から確認できるのです。今出山を訪れる方の中には、「大船渡を通りかかったら山頂が真っ赤なので、気になって来てみた」なんて方もいたほどです。
今出山へのアクセスですが、猪川町字善蔵敷から三陸町越喜来字西甫嶺へ通じる「ふるさと林道今出甫嶺線」の中ほどに今出山の山頂へ向かう分かれ道があり、林道は舗装整備されているので、猪川町と三陸町越喜来のどちらからでも入っていけますが、三陸沿岸道路や国道45号・107号を経由して林道に入ることや、路面の整備状況を考えると、猪川町側を利用した方が確実でしょう。
林道は舗装されており、車両のすれ違いも概ね問題ない程度ですが、道路の草刈りや支障枝の伐採が行き届いているとは言い難いため、慎重に通行してください。
林道に入ってから登っていくこと10分少々で、林道の左側に山頂へ通じる道が現れます。ここからは未舗装路となりますが、1kmほど進むと山小屋とトイレ、見晴らしの良い広場があり、駐車スペースとして利用可能です。山頂はそこから1kmほど先に進んだところにありますが、傾斜はさほどでもないので、小学生が歩いても時間をかけずに辿りつけます。
頂上からの景色は抜群で、眼下には大船渡の市街地と大船渡湾が広がり、太平洋を一望できます。ここに、山頂一帯に咲き広がるツツジの彩りが加えられると、ちょっと言葉では言い表せないような美しさです。
さて、未舗装路は林道の分岐から2kmちょっとなのですが、整備が頻繁に行われるような場所でもないので、結構わだちが深いところが多く、大雨のたびに土砂が流されるので、車高が高くない車での乗り入れはおすすめできません。傾斜からして4WDまでは必要ないと思われますが、車高の関係から頂上まで踏破できるのはジムニーやランクルに代表されるクロカンタイプの車に限られるでしょう。とはいえ、セダンタイプのファミリーカーで来ているツワモノも見かけたりしますが・・。
また、マウンテンバイクなど自転車での登頂もオススメです。そこそこ脚力があれば舗装路の林道は苦もなく上れますし、未舗装路に入った先に数か所あるガレ場をしのげば、達成感を存分に味わうことができます。
ツツジが咲く6月が一番のおすすめですが、風光明媚な場所なので、どの季節に行ってもその時々の景色を楽しむことができます。ちなみに、交通規制こそないものの、冬は積雪があるため、途中から歩いた方が無難かもしれません。