三陸町越喜来の崎浜地域に、首崎(こうべざき)という何ともおどろおどろしい名の岬があります。ネットでは心霊スポットなんて話もありますが、一体どんなところなのでしょうか。
首崎の由来
大船渡には、平安時代に坂上田村麻呂が蝦夷征討にやってきた際の「鬼」伝説にまつわる地名が、三陸町を中心に多く残っています。
鬼越(おにごえ)、鬼沢(おにざわ)、鬼間ヶ崎(きまがさき)、さらには脚崎(すねざき)、死骨崎(しこつざき)・・。越喜来という地名も、かつては越鬼来と呼ばれていたという話もあります。
田村麻呂に追われ、戦いの末討ち取られた「鬼」の体は海に流され、バラバラになった脚が流れ着いたのが脚崎、首が流れ着いたのが首崎、骨と化した体が流れ着いたのが死骨崎というわけです。ただ、「鬼」と呼ばれた者の正体は・・という話は別の機会に譲ります。
首崎にまつわる噂とは?
崎浜地域を奥へと進み、震災前は学生たちで賑わった北里大学キャンパスを抜け、首崎へと向かう林道の手前に小壁という名の漁港がありますが、人気もないためか一種独特の雰囲気を醸し出しています。かつて、人も通わぬ集落で近親の交配が進み、奇形で生まれた子らを壁のような断崖から投げ捨てたことから子壁という名がつけられた事が地名の由来という、都市伝説ならぬ地方伝説。真偽のほどは定かでありません。
また、岬の突端に首崎灯台がありますが、ここに焼身自殺した人の手形が付いていて、何度塗り直しても浮き上がって出てくるという話。そして、自殺の名所と言われており、焼身自殺した男性の霊や和服の女性の霊が現れるという話も。
実際のところはどうなの?
百聞は一見に如かず、現地はどうなのでしょうか。車であれば市内から1時間足らずで、公共交通機関であれば三陸鉄道・三陸駅付近から崎浜行きのバスに乗り、北里大学からは徒歩で2,3kmということになりますが、舗装路の先の林道は整備が行き届いていないため、倒木や落石で通行に支障が出る可能性があります。
林道を進み、半島の先端部が見えてくると間もなく鳥居に到着します。ここから徒歩で灯台を目指しますが、時期によっては草が生い茂っているため、ヘビや熊には十分注意してください。
10分足らずで林を抜けると視界が開け、広大な太平洋と白い岩肌が美しい半島の突端が並ぶのが見えます。北側の景色は田野畑村の鵜の巣断崖にも似て、まさに絶景です。灯台へ向かう途中に何とか降りられそうな崖もあり、安全とは言えずおすすめはしませんが、青空に映える白亜の灯台を見上げることができます。
灯台には手形などといったものはなく、鹿などが飛び出てこなければ、少なくとも昼間滞在する分には何も怖がるようなものはありません。
むしろ秘境感はたっぷりで、景色を独り占めできる贅沢感も半端ないです。碁石海岸のような手軽さは皆無ですが、首崎は大船渡随一の絶景が楽しめる、穴場観光スポットと言えます。おススメです!