県内の市で唯一、公立の文化会館がなかった大船渡に、平成20年11月に開館したのが、リアスホールの愛称で親しまれている市民文化会館と市立図書館です。
開館から早いもので10年以上経過していますが、まだ知られていないリアスホールの魅力を探るべく調査しました。
基本情報
・用途:文化複合施設
・素材:鉄筋コンクリート造
・竣工:平成20年11月15日
・規模:地上4階地下1階
・建築面積:5,238.02㎡
・施設:大ホール、マルチスペース、会議室、展示ギャラリー、アトリエ、和室・茶室、スタジオ、練習室
・客席数:
大ホール1,100席(1階670席、2階430席)
マルチスペース244席
・意匠設計:新居千秋都市建築設計
・施工者:戸田建設・匠建設共同企業体
・開館時間:
《市民文化会館》
9:00~22:00
《市立図書館》
平日:10:00 – 19:00
土・日・祝日:10:00 – 17:00
・休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月3日)、蔵書点検期間(不定期)
高いデザイン性
設計者と市民・行政が一体となり、50回にも及ぶワークショップを重ね検討した結果、大船渡をイメージさせる「リアス式海岸、穴通磯、海、空」をモチーフとしたデザインとなっています。
大ホールにはそのイメージが顕著に表れており、天井は空を漂う雲、壁は打ち寄せる波、客席は岩や船団、座席の背もたれはさざ波を表現しているそうです。
平成21年に日本建築家協会の日本建築大賞、グッドデザイン賞、平成26年に省エネ・照明デザインアワードグランプリなど、数々の賞を受賞しています。
開館当時、「いつになったら外壁塗るんだろうなー」と思っていましたが、どうやらそういうもののようです。
姉妹館?
平成23年に竣工した秋田県由利本荘市の文化交流会館「カダーレ」は、外観やホールの様子など、リアスホールを彷彿とさせる作りになっています。というのも、リアスホールを設計した新居千秋氏がデザインを手がけており、施工も同じく戸田建設でした。
有名アーティストによるライブ
平成21年の落成記念や24年に無料ライブを開いた小田和正をはじめ、平成25年には嵐が、平成24年と26年の二度にわたってGLAYがリアスホールで歌いました。
市内に高名なアーティストが来るのは嬉しい限りですが、本来座席数と一人あたりの入場料から開けるイベントの規模は決まってしまうため、被災地支援などの採算を度外視したイベントでない限り、これからはなかなか難しいと思われます。
蔵書数の県内順位は?
岩手県内図書館の蔵書数を調べてみました。トップ20は以下の通り
第1位:岩手県立図書館
蔵書数:692,000
第2位:盛岡市立図書館の外観
蔵書数:345,439
第3位:北上市立中央図書館
蔵書数:311,339
第4位:奥州市立水沢図書館
蔵書数:278,000
第5位:一関市立一関図書館
蔵書数:248,631
第6位:盛岡市都南図書館
蔵書数:197,099
第7位:花巻市立花巻図書館
蔵書数:179,122
第8位:一関市立大東図書館
蔵書数:142,980
第9位:大船渡市立図書館
蔵書数:140,000
第10位:奥州市立江刺図書館
蔵書数:126,000
第11位:釜石市立図書館
蔵書数:125,973
第12位:金ケ崎町立図書館
蔵書数:125,973
第13位:花巻市立石鳥谷図書館
蔵書数:112,606
第14位:二戸市立図書館
蔵書数:111,992
第15位:宮古市立図書館
蔵書数:111,000
第16位:洋野町立種市図書館
蔵書数:99,000
第17位:久慈市立図書館
蔵書数:93,000
第18位:一関市立川崎図書館
蔵書数:85,607
第19位:盛岡市渋民図書館
蔵書数:81,507
第20位:一関市立千厩図書館
蔵書数:81,334
大船渡は県内の図書館のうち9番目という結果でした。1位は県立図書館で、当然といえば当然の結果かと。人口規模の大きな市に蔵書数が多いのもうなずけますが、必ずしも当てはまらなかったりして興味深いものがあります。カバーする人口の一人当たり蔵書数なんて出してみればその地域の文化的な尺度になるかも!?
「読みたい本がなくて」などという声も一部では聞かれるリアスホール図書館ですが、どうしてなかなか恵まれてますよ、という結論になるのかと。
ちなみに令和2年3月末現在、蔵書数は159,902に増えています。
市民でなくても本が借りられます
図書館の本の貸出しは、大船渡市内在住者、市内に通勤・通学している人、市内に帰省先がある人が対象ですが、『震災により当分の間』陸前高田市と住田町の住民にも貸出可能、だそうです。
避難所
東日本大震災が発生した当時、リアスホールは避難所に指定されていませんでしたが、それにも関わらず避難者が次々に集まり、保護する必要に迫られたことから、結果的に避難所を開設することになりました。大ホールは天井の破損が確認されたため閉鎖せざるを得ず、館内施設・設備を駆使して最大で270人が避難所生活を送りました。
そして8月18日に閉鎖されるまで、避難者の安全を支え続けたのです。
おわりに
開館から10年の時を経たとは思えないほど古さを感じさせず、館内は迷路として探検イベントに利用される優れたデザイン。現在レストランの営業がないのが惜しいところですが、これからもリアスホールは大船渡自慢の文化施設として市民の暮らしを支えてくれるでしょう。